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【三脚解説シリーズ Vol.6】重心高とカウンターバランスチャートの見方について
いつもパンダスタジオレンタルをご利用いただき、ありがとうございます。自称「三脚ソムリエ」のスタッフ櫻井です。最近はビデオカメラだけでなく、キヤノンEOSシリーズをはじめとする一眼レフカメラや、SONY αシリーズやコンパクトシネマカメラのFX3やFX6、PanasonicルミックスGシリーズといったミラーレスデジカメ等でも動画撮影される方が増えてきております。デジタルカメラの仕様は良く分かっていても、三脚に気を使う方はそれほど多くないのではないでしょうか。カメラが高性能化していく中で、三脚をしっかりしたものを使わないと、せっかくの画がガクガクになって台無しになってしまいます。4K, 8Kの撮影を行うのであれば、カメラを支える三脚の特性もしっかり理解した上で運用する必要があります。
今回は、動画用三脚でよくわからない人が多くいると思われる「重心高」と「カウンターバランスチャート」の見方について、概要をご説明をいたします。
重心高(Center of Gravity)とは?
一般的にカメラプレート接続部からレンズ中央までの高さをいいます。各メーカーのHPの三脚の仕様表には、「重心高 〇×mm」「C.G. 〇×mm」(C.G. はCenter of Gravityの略)といった記載がされています。(動画用三脚の仕様表の見方に関しては、以前のブログ(Vol.2 「動画用三脚の仕様の見方」)で紹介してありますので、わからない方は併せて見て頂ければと思います。)重心高により、想定されているカメラが変わります。ただし、カメラの上にフィールドモニターやLEDライト等のアクセサリーをつけていると重心高が変わってきますので、あくまで目安としてご利用ください。
▲Libec様のHPより
重心高:55mmの想定カメラ
① デジタルカメラ(Canon EOS Rシリーズ、Panasonic Gシリーズ、SONY αシリーズ等):主に、一眼レフカメラやミラーレスデジカメを想定しています。
重心高:100mmの想定カメラ
ハンドヘルドカメラ(SONY NX5R、Z190、Z280等):主に2~3kgぐらいの業務用カメラを想定しています。
重心高125mmの想定カメラ
① ショルダーカメラ(SONY PXW-X320、URSA BROADCAST等):肩で支えるタイプのカメラです。主に5kg以上のカメラを想定しています。
②デジタルシネマカメラ(Black Magic Design URSA MINI PRO, SONY FX6等):搭載するアクセサリー(レンズ、ビューファー等)で重心高が大幅に変わってきますので、その点はご注意ください。
カウンターバランスチャートとは?
重心高と動画用三脚ヘッドが持つスプリング機構の強さの値を組み合わせたチャートで、適切なカメラを選定する際に使用されます。カウンターバランスの方式によってチャート内容が変わりますので、それぞれの見方ついて解説を行います。
カウンターバランス:固定式の場合
主にエントリークラスのモデルが採用しております。ここでは例として、Libec様の「TH-X」のカウンターバランスチャートをピックアップいたします。
▲Libec様のHPより
縦の値が「重心高」、横の値が「カウンターバランス重量」となります。曲線と重心高が交わる箇所がその三脚のカウンターバランス重量となります。つまり、TH-Xは重心高55mmの時にカウンターバランス重量が2.8kg程度でバランスが取れるスプリングの強さの設定になっているということです。(実際はヘッド自体の粘りもあるので、もう少し広い範囲でバランスが取れると思います)
では、重心高100mmの場合はどうでしょうか。上記のチャートから見ると、約2.0㎏のカウンターバランス重量の設定となるので、例えばNX5R(約2.5kg)のようなハンドヘルドカメラを使用した場合、少しだけカウンターの力が足りないと思われます。(もちろんロックは可能ですし、足りないカウンターの力はパン棒でフォローすればOkです)
カウンターバランス:段階式の場合
ミドルクラスからハイエンドクラスの三脚に採用されております。カウンターバランスを完全に取るのは難しいものの、搭載できるカメラシステムの幅が広いのが特徴です。例として、Libec様のNX-300Cをピックアップいたします。
同モデルはカウンターバランス調整が0+5段階に設定が変更できるモデルですので、曲線が5本ございます。難しいように思えますが、見方は固定と変わりません。重心高55mmにて設定されているので、そちらと曲線の交わりを見ていきます。
▲Libec様のHPより
カウンターバランス設定は、下記の状態でバランスが取れるような設定になっています。(あくまで参考値なので、その点はご了承ください)
0段目(フリー):0kg
1段目:約2.0kg
2段目:約4.0kg
3段目:約6.0kg
4段目:約8.0kg
5段目:約10.0kg
つまり、このモデルは重心高55mmの設定で、耐荷重域は0~10.0kgとなります。
カウンターバランス:無段階式の場合
ミドルクラスからハイエンドクラスの三脚に採用されております。例として、Libec様のRS-250Dをピックアップいたします。段階式に比べ、支えられるカメラシステムは限定されるものの、カウンターバランス範囲内であれば、ティルトのロックなしで完全にカメラを静止させられるシステム(パーフェクトカウンターバランスシステム)を採用しています。こちらは主にハンドヘルド系のカメラを想定しており、重心高のベースは100mmで想定されています。カウンターバランスチャートは上記2つとは書き方が異なります。
▲Libec様のHPより
色塗りで示した所がカウンターバランスが取れる範囲になります。つまりこのモデルは業務用ハンドヘルドカメラ(重心高100mm)の時に約1.8kg~5.0kgまでの範囲でバランスが取れるという事です。一方で、ショルダーカメラ(重心高125mm)の時はチャートから読み取ると1.5kg~4.3kg程度のパーフェクトバランス範囲になるので、このモデルでは、通常5㎏を超えてくるショルダーカメラの運用は適さないという事がわかります。(実際スプリングの強さが足りずロックなしではティルトは静止させられません)
終わりに
いかがでしたでしょうか。「重心高」や「カウンターバランスチャート」は、お使いのカメラに最適な動画用三脚を選定するにあたり重要な項目です。しっかり理解していただいて、お客様の最適な動画用三脚を見つける手助けになれば幸いです。パンダスタジオレンタルでは今回ご紹介したデジタルカメラや動画用三脚のレンタルも行っておりますので、併せてご検討くださいませ。
次回について
基礎中の基礎になりますが、動画用三脚の「カメラプレート」について記載予定です。
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